早期審査について(2)
ー特許出願の審査を速やかに実施してもらう方法ー

 ・・(早期審査について(1)に続く)・・

 (2)出願と同時に早期審査を申請する等、通常の公開公報の発行よりも早期に特許公報が発行されてしまう可能性があるため留意が必要となります。

 特許出願した内容が、実際の実施製品(実施予定品)を確実にカバーしていれば問題はないのですが、試作の前段階にある設計図や企画などの段階で早期審査を申請すると、後々問題が生じる可能性があります。
 設計図や企画の段階から、実施化に向けて試作品を製造したり耐久試験等を実施したり、或いは、その製造工程などを検討して行く際、何らかの問題(トラブル)や課題が見出されることはよくあることであり、最終的に市場に投入した実施製品が、特許出願した内容からシフトしている(出願内容でカバーしきれていない)ことがあります。

 通常、特許出願が公開されるまで(公開公報の発行まで)は、出願から1年6ヶ月の猶予があり、実施化に向けて準備する段階で発生した改良発明や変更部分については、公開前であれば新規出願したり、国内優先権出願する等して、その実施化される内容を、順次カバーして行くことも可能でしょうが、早期に特許権が設定登録されて特許公報が発行されると、改良発明などがカバーできなくなることもあります(特許公報が発行された後、改良発明について特許出願すると、自らの出願に基づいて「進歩性がない」として拒絶される可能性がある)。

 結果的に、実際の実施品そのものが十分に保護されなくなってしまう可能性がありますので、公開公報が発行される前における早期審査制度の活用に際しては、早期審査を申請する時期と実施化に向けての準備状況等について留意する必要があります。

(3)第三者との間でライセンス契約等をするにあたり、早期審査を申請して早期に権利化を図ることで、特許権として安定した権利内容で契約を締結したり、或いは商談等することができます。
 なお、出願段階において、仮専用実施権、仮通常実施権、及びそれらの登録制度を活用することも考えられます(特許法第27条、第34条の2、第34条の3)。

(4)実施するに際して、本来であれば、関連する公知文献、他人の権利取得状況、特許取得の可能性等について早期に知りたいところですが、十分な調査能力がないと、そのような情報を自ら入手することは困難です。

 早期審査を申請することで、そのような関連する公知文献情報の早期の取得、及び一次審査の結果による特許取得の可能性についてある程度の判断ができますので、実施内容の再検討、及び、更なる改良発明の着想等に利用することができます。
 ただし、特許庁の審査結果で挙げられる公知文献は全てを網羅するものではありませんので、実施をするに際しては、慎重に公知文献や特許公報等を調査する必要があるでしょう(たとえ挙げられた公知文献と抵触しなくても、利用発明等、それ以外の特許権等に抵触してしまう可能性はあります)。

 ※中小企業・個人は、早期審査を申請する際の先行技術の開示については、必ずしも先行技術調査を行う必要はなく、早期審査の申請時に知っている文献を記載することで足ります。

(5)その他
 外国出願を検討している場合、早期審査の結果を見てから外国出願をするか否か、及び、請求項の記載をどのようにするか等の判断材料にすることができます。
 また、外国関連出願において、米国に出願している場合、早期審査で挙げられた公知文献に関しては、情報開示義務の対象になる可能性がありますので、留意が必要です。

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