分割出願について(3)
ー分割出願の審査のために必要な説明書(上申書)ー

 分割出願に際しては、出願人は、分割出願の審査のために必要な説明書(上申書)の提出が要請されています。

1.上申書の内容

 分割出願する際の発明のポイントについては、出願人側が最も知悉するところであり、また、原出願との間の相違点についても、十分把握していることから、上申書を提出することで、審査をスムーズに進めることが可能となります。上申書を提出しないことによる罰則規定はありませんが、場合によっては、審査官から第194条第1項の規定に基づいて説明書類の提出を求められたり、或いは、説明書類の提出を求められたにもかかわらず提出を拒んでいると、分割出願が実体的要件を満たしていないとして審査されてしまう可能性があります(出願人にとっては不利になることも予想されます)。

 上申書を提出することにより、出願人が不利な取り扱いを受けるものではなく、また、実務上、分割出願の明細書の作成と同時に上申書を作成することにより、分割の要件を具備しているか否か、及び第50条の2の通知がされないようなクレーム作成など、客観的な検討ができますので提出することをお勧めします。

 なお、上申書に関しましては、原出願からの変更箇所を明示して、ア)原出願からの変更箇所が原出願の明細書等に記載された事項の範囲内であることの説明、イ)原出願に対して拒絶理由通知があった場合等、その拒絶理由については解消されていることの説明、ウ)原出願とは同一発明でない(第39条第2項に該当しない)説明、がされていれば良いでしょう。

2.第50条の2の通知について

 原出願と分割出願との関係において、いずれか一方の出願に拒絶理由の通知があった場合(殆どのケースでは原出願と考えられます)、他方の出願が、その拒絶の対象となったクレームと同一(完全同一は勿論、周知・慣用技術を付加した程度のものも含むとされています)である場合、第50条の2の通知がされます。

 これは、いわゆる最初の拒絶理由通知であるものの、実質的に補正が許容される範囲は、第17条の2第5項に限定されるのであり、考え方としては、最初の拒絶理由=最後の拒絶理由となってしまいます。

 分割出願するに際しては、原出願において拒絶されたクレームをそのまま分割したり、或いは周知・慣用技術を付加しただけでは、確実に第50条の2が通知されることとなり、それに対する補正も制限的なものになるため、注意が必要になります。

 上記1.の上申書を作成することは、そのような通知を回避する上でも効果的と考えられます。

3.その他

 分割出願をする際には、原出願の明細書、又は図面に記載された事項の範囲内で行う必要があります。
 分割出願に関する判断基準は、補正に伴う新規事項と考え方が同様ですので(審査基準第Ⅴ部第1章第1節2.2の実体的要件)、
 原出願の明細書、又は図面に記載された事項の範囲内とは、
ア)当初の明細書や図面に明示的に記載された事項
であり、そのような明示的な記載がなくても、
イ)当業者によって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項(新たな技術的事項を導入しないこと)
となります。

 第三者との関係で、戦術的な意図をもって分割出願することもあるかと思われますが、原出願に記載された事項を超えるような(自明性が疑わしいような)分割出願は、将来的に拒絶理由、異議申立理由、無効理由となったり、場合によっては、審決取消訴訟に発展する可能性もあります。
 また、原出願において、課題を解決する上で必須の要件とされている技術的な特徴を分割出願時に削除したり、原出願における特定の構成要素を、分割出願時に表現上、上位概念化する等、原出願において明示的な記載がなかったり、明確な根拠が見出せないもの等については、後に問題が生じる可能性があります。

 これらのケースが必ずしも分割要件違反(新規事項の追加)と判断されるわけではありませんが、原出願の記載事項の範囲内での分割出願であるか否かについては、新規事項に関する審査基準や、新規事項に関する判例を参照することをお勧めします。

 

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