国内優先権制度の利用の注意点1
ー国内優先権制度の利用の注意点ー

 国内優先権制度は、すでに出願した自己の特許出願(先の出願)の発明を含めて包括的な発明として優先権を主張して特許出願(後の出願)とする場合、後の出願に係る発明のうち、先の出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲、図面に記載されている発明については、新規性、進歩性などの判断に関し、その出願の時を、先の出願の時とする制度です。

 ところが、特許の実務者や発明者の中には、国内優先権制度を利用して出願した発明については、全ての発明が先の出願時まで遡る、と考えていることがありますが誤りです。
 これは、後の出願を、それ自体として一つのまとまった出願として捉えてしまうことから生じる誤解とも思われます。また、先の出願は、その出願日から1年4月後にみなし取り下げされてしまい、実務上、後の出願ファイルが残って行くことから、そのファイルに記載された優先日を見て、出願日は先の出願日である、と誤解してしまうのかもしれません。

 通常、国内優先権制度を利用する場合、図面を追加する等、新たな実施例を追加するケースが多いのですが、このようなケースでは注意が必要となります。
 これは、新規事項を追加する補正が厳しく制限されていることとの整合性を考慮すれば明らかと思いますが、仮に、そのような新たな実施例等を「補正」によって追加記載した場合、その補正は許容されますか?ということを考慮すれば容易に理解できると思います。
 当然、図面を追加したり新たな実施例を追加するような補正は、厳しく制限される筈であり(特許法第17条の2第3項、審査基準の「新規事項」参照)、このような補正は、間違いなく拒絶されます(拒絶理由であり無効理由となります)。

 補正との整合性を考慮すれば、後の出願において新たに追加した事項が、拒絶、無効にされることなく、先の出願日としての地位を確保する、ということは有り得ないのであり、当然、審査基準においても、「後の出願の請求項に係る発明が、先の出願の願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内であるか否かの判断は、新規事項の例による」とされています。

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