特許権を侵害する旨の通知があったとき(3)
ー警告状が届いたらやるべき事とはー

 ここでは実際に警告状などが来た場合の基本的な留意点を挙げます。

(1)権利の内容の把握

 通常、警告状には特許番号が記載されているか、特許公報が添付されていますので、その特許公報、及び特許庁における権利が成立するまでの資料(包袋閲覧とも称します)を入手し、特許請求の範囲に記載されている発明と、自社の製品とを対比して、まずは侵害を構成しているか(技術的範囲に属しているか)否かを判断します。なお、それ以外にも、権利が有効に存続しているか、権利期間はどれ位残っているか等、形式的な確認もしてみましょう(一度に多数年の年金を納めていれば、権利者にとっては重要な権利と考えられます)。

(2)周辺状況の確認

 警告状が来たら、取り敢えず、周辺状況を確認してみましょう。
 ここでの周辺状況の確認は、少なくとも3つ考えられます。

 第1は、警告状に記載されている特許権のみをマークするのではなく、その権利者が所有する周辺の特許(出願中も含めて)にも注意を払うことです。
 警告状を差し出した権利者は、通知してきた特許権を含めて、すでに、ある程度の特許網を構築している可能性があります。例えば、上位概念から下位概念に至るまで、或いは、その周辺技術や変更可能な技術を既に抑えている可能性もあり、敢えて、対象製品と一致するような下位概念特許を用いて警告状を出してきている、ということも考えられます。

 第2は、同業他社も同様な製品を販売していないか確認してみることです。このようなケースでは、同業他社にも、同じ権利者から同様な内容の警告状が送られている可能性が考えられます。同業社の数が多ければ、業界内において、そのような警告状についての問題が顕在化していることも考えられ、例えば、有力な無効理由の情報や対応策などを入手できるかも知れません。

 第3は、警告状の送り主が、製品を製造するような主体者であれば、こちら側が所有している特許権等を侵害していないか確認してみることです。仮に相手方が侵害行為をしているか、そのような蓋然性があれば、これからの交渉を有利にすることも可能になります。

(3)権利侵害しないことが明らかな場合

 特許請求の範囲と自社製品を対比した結果、明らかに侵害を構成しない(当社製品は、特許請求の範囲に記載されている全ての構成要件を充足しない)ということが明確であれば、具体的に侵害を構成しない部分を明確に指摘して回答書を送付すれば良いでしょう(ここで終結できれば一番好ましい結果です)。

 なお、単に「弊社は侵害行為をするものではない」等といった漠然とした回答では、その後、相手方と何度も書簡をやり取りする可能性もあり、負担もかかりますので、侵害を構成しないことが明らかであれば、1回の対応で終結させるのがベターです。製法に関する特許については、こちら側の製法を相手に開示するのは問題があるため、詳細な検討が必要になります。

(4)権利侵害しているか否かの判断が難しい場合

 最終的に特許になっている発明との間で、侵害を構成しているか否かの判断が難しかったり微妙である場合、特許請求の範囲に記載されている発明(記載用語やその解釈)については詳細な検討が必要となります(このようなケースが多いと思います)。

 このようなケースでは、例えば、明細書内で使用されている用語の解釈、権利が成立するまでの過程、公知技術の存在などを検討する必要があります。
 検討した結果、特許請求の範囲の構成要件は、○○○と解釈されるべきであり、当方の製品は、侵害を構成するものではない(技術的範囲に属さない)、といったことが、客観的かつ合理的な理由をもって回答できれば良い(裁判事件になったとしても勝ち目が無い、と相手方に思わせるような論理を構築できれば良い)でしょう。

 なお、弁護士、弁理士に鑑定書(見解書)を作成してもらう、特許庁に判定を請求する、等の手段をとることも考えられますが、経験上、良い面と悪い面の双方があるため、留意が必要です。

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