拒絶査定不服審判について2
ー審判請求と補正却下についての不服申し立てー

 拒絶査定不服審判を請求するに際しては、補正却下があった場合、審理の対象が明確になるように、請求の理由において、補正の却下について不服があるかないかを明示する必要があります。このため、審判請求時の選択肢として、
補正却下について、①不服を申し立てない、②不服を申し立てる、があり、さらに、③審判請求時に補正をする、④審判請求時に補正しない、があります。

 実際には、拒絶査定不服審判は、(①,③)(①,④)、及び(②,③)(②,④)の組み合わせのいずれかになると考えられます。

1.補正却下の決定についての不服を申し立てない場合、審査官が行った補正却下に承服(補正却下は有効)することになりますので、明細書、及び図面は、却下された補正がされる前の状態となります。

 このため、審判請求時において補正する場合((①,③)のケースであり、審査で補正却下の決定がされなかった場合も該当します)、その補正(特許法第17条の2第5項)は、却下される前の状態(拒絶査定の対象となった明細書及び図面)に基づいて行い、請求の理由については、その補正した内容に基づいて主張すれば良いでしょう。
 審理の対象は、審判請求時にした補正の内容となります(前置審査となります)。

 通常、補正が却下されるのは、最後の拒絶理由の通知の際に行った補正が独立特許要件を満たしていない、というケースが多いことから、そのような補正とは異なる観点で、再度、請求項を減縮補正することができます。

2.補正却下についての不服を申し立てず、かつ補正もしない場合((①,④)のケースです)、上記同様、審査官が行った補正却下に承服(補正却下は有効)することになりますので、審理の対象は、補正前の明細書、及び図面となります。
 このため、請求の理由については、却下される前の状態(拒絶査定の対象となった明細書及び図面)に基づいて、拒絶査定の内容に誤りがある(引例に記載された発明の認定の誤り、進歩性の判断の誤りなど)点について主張します。

3.補正却下についての不服を申し立て、補正をしない場合((②,④)のケースです)、審理の対象は、審査における補正却下が適法であったか否かとなります。
 このため、請求の理由については、却下の対象となった補正について、その補正が適法であることを主張(最後の拒絶理由が通知されたときに行った補正が適法であることの主張)することになります。

4.補正却下についての不服を申し立て、補正をする場合((②,③)のケースです)、審理の対象は、審査における補正却下が適法であったか否かとなります。
 このため、請求の理由については、却下の対象となった補正について、その補正が適法であることを主張(最後の拒絶理由が通知されたときに行った補正が適法であることの主張)することになります。

 また、補正却下の決定は、それが取り消されない限り有効となりますので、審判請求時に行う補正(第17条の2第5項)は、却下される前の状態(拒絶査定の対象となった明細書及び図面)に基づいて行い、請求の理由については、その補正した内容に基づいて主張することとなります。
 補正却下の決定に対する不服の申し立てを伴い、かつ、審判請求時に補正を行う場合は、「補正却下に不服のある事項を全て含む補正」を改めて行う必要があります。すなわち、補正書では、補正却下の対象となった請求項、及び新たに補正する請求項を記載する必要がありますので、請求項の記載が不明確にならないように留意する必要があります。また、請求の理由についても、補正却下の対象となった請求項、及び新たに補正する請求項毎に項分けして、不明確にならないように主張した方が良いでしょう。

4.拒絶査定不服審判を請求するにあたり、補正却下の決定に対して不服の申し立てを行うのであれば(上記3.4.のケースです)、併せて分割出願することを考慮した方が良いでしょう(分割出願できる機会はこのときが最後になる可能性が高い)。

 これは、補正却下の妥当性のみを争って、それが受け入れられなければ、権利化する道筋が途絶えてしまうこと(審決取消訴訟をすれば別)、また、補正却下についての不服を申し立て、かつ補正もすると、審理内容が錯綜することが予測されるためです(分割出願は、審判請求と同時に行えば、出願当初の明細書、及び図面の記載事項の範囲内で行えます。また、補正却下についての不服のみを拒絶査定不服審判で争えば、請求の理由における主張も錯綜することなく明確になります)。

 さらに、「請求項に追加した事項は新規事項に該当する」と指摘されて拒絶査定がされてしまったケースでは、「新規事項」と指摘された事項を削除すると、第17条の2第5項の「請求項の限定的減縮」に該当しないと判断される可能性もあり得るため、分割出願を検討した方が良いでしょう。

 なお、分割出願した内容が、原出願と同一性の範囲にあると、第50条の2の理由の通知がされる可能性もありますので、分割出願する際の請求項については留意が必要となります。

 

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